モンキーとの別れ

今回、本格的にモンキーを売ることにした。

数年前に興味を示した知人へ渡し、数週間前に「乗れなくなったから返す」と手元へ戻ってきた。外装も渡した時とほぼ同じコンディションだったから、よほど丁寧に乗っていたんだろう。

 「このバイク、どうだった?」と聞いたら「コレ乗れたら何でも乗れるな」と返ってきた。渡したときよりオドメーターは1000も進んでなかったが、おそらく他では味わえない楽しみを刻んだんだと思う。

やっぱりバイクは乗って楽しいが1番、そう考えるとオレの家に置いとくのはかなり勿体無いことになる。なんせ乗れないから。正直今のライフスタイルだと休日にバイク3台を乗り回すのは厳しいものがある。

そういう状態だから、全国のどっかに居る「モンキー乗りてぇな、50の」と思ってるヤツにあげちゃったほうがお互い幸せになれるんじゃねえかなと。

他の人からは「絶版だし、綺麗にしてれば数年後に高値で売れんじゃない?」とか「デザイン良いし、オイル抜いて飾っとけば?」とか言われたけど、そういう次元じゃない。

カネはもちろん欲しいが、それ以上に誰かにモンキー独特の乗り味を感じてもらいたいという気持ちがある。ならすることは1つ。自分の手から放し、然るべき場所で活躍してもらう他ない。なので知り合いにオークションへかけて貰うことにした。これでどこに行くかは分からない、一生のお別れだ。

ああ、書いてて段々思い出してきた。そういやオレがこうなったのもモンキーのせいだったんだよな…

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見た目に反して乗りづらいバイク、最初から最後までそんな印象だった。

4速mtで、3馬力のエンジン。発進はほぼ2速から。それでもスピードが出ずにフケ切ってしまう。どこ走っても5秒でトップギア。積極的に1,3速を使った試しがない。

でも飛ばしシフトをするとすぐ車体がガタつき咳き込む。そのくせ「エンジンブレーキだけで止まれるんじゃねえか」ってくらいのギア比で、パワーデリバリーがメチャクチャだった。

限られたパワーでの適切なアクセルワーク、回転数を気にしながらクラッチレバーを握り、シフトのアップダウン。基礎が勝手に、イヤってほど叩き込まれる。ほぼ調教ですよ。コッチに是非は問わず、頑なに貫く。

雑な発進、「ハイ、駄目でーす」油断して何度もウイリーした。

登り坂を走る、「2速だとつらいよー」「3じゃ登りませーん」しょっちゅうだ。だから助走をつけて走ったり、カーブで出来るだけパワーが逃げないようにと、そこらへん走るだけでも色々な工夫が必要だった。

そんなバイクが初めてだから、中型教習車のcb400sfなんて天国に思えたもん。「すげぇラク、こんなの誰でも乗れんじゃん」って。

でもすぐに「ラクって面白くねぇなあ…」って思考になってしまったんだからスゴい。モンキーの調教力が。

それは何年経っても抜けず、現在所有してるのが250ccと125ccのバイク、クルマに至っては軽のバンタイプだ。もちろん全部mt。

操作の忙しさに快楽を覚えていまっている、もうちょっとした変態ですね。ハッキリ言っちゃうけど。

オレをそんな風にさせたモンキーと別れると思うと、感傷的にもなる。しかし彼がどこかで誰かを楽しませてくれるなら、それはそれで送り出すのも悪くはない。広い目で見れば良いことだしさ。

俺のバイク思想のルーツであり、乗り方の教官であり、何処へでも連れてってくれた友達。6年、実働は2年くらいだけど、良いお付き合いは出来ていたと思う。

実体としては無くなってしまうし、思い出は薄らいでいくかもしれないけど、手足に叩き込まれた技術は一生忘れない。忘れたくても忘れられないね!

ありがとうモンキー、最初がアナタで本当に良かった。あのとき隣のスクーターを買っていたら、マニュアルの楽しさにも気付けなかったし、こんなブログを立ち上げなかったかもしれない。

名残惜しいけど、時と共に環境が変わり物事は流転していくのも事実。だから最後にせめて、最大の敬意を持ってココに気持ちを記しておく。

オレを育ててくれて本当にありがとう。動かなくなるまで看取れなかったのは残念だけど、次のオーナーさんの所でも元気で居てくれることを祈っています。どうかご達者で。

 

おしまい。