シフトダウン、シフトダウン!

MT車の何が良いってシフトワークだ。

クラッチ放して、アクセルで回転合わせて、カコッとシフトを選び、しっとりクラッチを擦り合わせる。

このクソめんどくさい作業が上手くいったときに「やった!」とか「いいじゃん!」と自分とクルマを褒めてあげる空間、幸せでしかない。

シフトアップもダイレクトな加速を味わったりエンジンとギア特性を知りやすいファクターなのだが、オレが特に好きなのがシフトダウンだ。

 進むより停まる方が個人の技量が出る。それは元GPライダーの中野真矢さんがどこかの番組で「みなさんGPマシンで300km/hは出せると思いますけど、そこからのブレーキ操作がかなりキビしいと思います(笑)」と言ってたくらいだから、きっとそうなんだろう。

というか、そう。減速時のシフトダウンは色々と難しい。いかにショックを出さず、キッチリとスピードを落とし、車体を揺らさず停めたりコーナーへと曲がる準備を作るか。

イマドキだとコンピューターが上手く制御してくれたり、そうじゃなくてもヒールアンドトゥなる技でシフトショックは滑らかで再加速へ備える技術がある。

しかしオレが所有してる軽のバンではそんな制御も無く、技術だってアクセルブレーキ配置や踏力の関係上難しい。

だから各ギアにおけるエンブレのスピード感を頭に叩き込んで、シフトを上手く変える。それでも回転が自由に維持出来ないから、気持ちいい再加速になることはほとんど無い。

そんな各ギアのエンブレを使った行為はとてもスポーティーとは程遠いが、裏を返せばギア1つ1つの性能を存分に味わうという面白さがある。

ここまで粘る、ここからは抜ける、ここからじゃ揺れる。「歯車が自分に合わせる」オラオラ主張じゃなくて、「自分が歯車に合わせる」という穏やかな考え方が軽バンが持つ雰囲気とマッチしている。

固いシフトフィールとハンドルペダルから伝わるレスポンスの曖昧さ。貨物運び特化なギア比ゆえのドン臭さ。

そんなクルマを頭と身体を使って思った所にビタッと停まったり、スムーズとは形容できなくともそれなりに加速をする、交通上最低限の行儀の良さをどうにか引き出すのが楽しいことこの上ない。

そのうえ車体のジオメトリーも中々だ。慣性に弱い背高ノッポでイマイチ踏ん張れない狭い横幅、サスとタイヤは350kgに負けない異様な硬さ。とかくパワーを操るには悪条件だからこそシフトダウンが燃える。だから上手くいったときに喜べる。ナイスだぜシフトダウン。シフトダウン最高。

他のMT車、それこそスポーツカーでもファミリーカーでも独自の楽しみ方というのはある。

オレが考えるに最初から皆が諸手を挙げて「コレは良い!」と御輿を担がれてるクルマの中で酔っぱらうのも良いけど、「おしい!」「これはちょっと」と思われてるクルマを自分の試行錯誤でどうにか走行を成立させる求道的な愉しみもある両面性の濃さ、ひとことで言うなら「文字数字やマルバツで判断出来ない底知れなさ」を孕んでいるのはMT車の1つの魅力だと思うんだよね。

今回はその中にあるシフトダウンをテーマにしてみたけど、他にも言語化出来ないだけで沢山ある。

魅力の解析さえ進めば、この内容だってブラッシュアップしてくつもりだし、新規開拓だってしていく。

古臭く金属臭く、いずれは淘汰されてく機構に深入りするのもどうかと思うが、好きになってしまったモノは止められない。

それに本当ならもっと丁寧に均してから表現するべきだが、立場上誰も躍起になっては文を見てないだろうし、今回を持ってココを「書く実験室」としての側面も持たせていこうと思う。まずはクイックアンドダーティーってヤツだ。

面前で吐き出して吐き出して、自分で振り返り、稀に来るかもしれない反応に顔を赤くしながら言語化精度を上げていく…いきたいね。

これ以上続くと何だか危ない話になりそうだから、今日はここまで。

それじゃ、またいつか。