PCXに乗った

「もうコレでいいんじゃないかな?」

これはPCXを如実に表している言葉だ。決して投げやりに言ってるワケではなく、何をするにしても何でも足りてる、というか全部足りてる。そんな印象が色濃く残るバイクだった。

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近影。何となく近影。

例えば乗りやすさ。ATだから操作はカンタン、右手をガバッと捻れば進んでくれる。肝心の加速も同排気量のMTとドッコイもしくはそれ以上だ。

そのうえ乗り心地も大変良い。とにかくラク。何かにつけてラクが顔を出してくる。

次にデザイン。手足の触れる場所は使い勝手の良いサイズ感で収まりながらも、周囲の目につく前後の造形は、どこか前衛的で張り出しが結構強い。まるで「そこいらへんの原付とは違うんだぞ」と主張しているようだ。

それでいて燃費も良いし、多少の荷物ならシート下に放り投げとけばOKだし、それでも足りなかったら無加工でリアボックスを取り付けることだって可能だ。

しっかり走れて、荷物も載せられて、カッコが付いて経済的。もうコレでいいじゃんか・・

あ、高速道路?大丈夫150ccバージョンがあるから。ソッチなら高速乗れるから。

凄いよねPCX、素晴らしいねPCX、何もかもPCXで済んじゃうね・・

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メーターの造形からして何でも出来そうじゃん?え、分からない?そうですか・・・

 

「随分なご様子だけど、じゃあアンタ買うのか?」と言われれば、たぶん買わない。買うとしても優先順位は低い。

だってスキがないんだもん。いや、探せばあるんだけど、公道をフツーに走ってる分には大きな不安も不満もなくて、何かこう・・バイクとして接してみるとエラく拍子抜けする。

もちろん走っててPCX独特の面白さは出てくる。くるんだけど、それ以上に「便利」「ラク」「ふんわり」みたいな実用的な部分の主張が強く、「楽しい」が二の次に感じる事が多々あった。

オレにとってバイクは「スゲー楽しい」物か、「楽しくて便利」な乗り物とばかり思ってたから、まあ面を食らったよね。こんな便利が前に強く出るバイクもあるのかと。

そういえば、しばらく走行していると「これは色々とバイク任せにしちゃった方が良いですな」「ええ、確かにそうですね」「というかハラ減ったな」と、自分内会議をしていた事も多々あった。便利なおかげで脳内に余裕が生まれやすいんだろうな。

つまり、PCXに乗ると気持ちの方がスキだらけ。バイクはほとんどスキ無し。ということはライダーやること無し・・とまでは言わないけど、これならATのコンパクトカーで良いかなって思っちゃうんだよね。維持費とか小回りとかは全然違うけど、マインドは似通った感じがする。特に合理的っぽい雰囲気とか。

それにオレ自身マイカー所有してるから、余計思っちゃう。「オレはいいかな」って。気持ち的に替えが利くし。

PCXを書くにあたってどうしても「通勤電車の代わりにコレ」「とにかくアソコまで疲れずに」「でもあんまりお金かけずに」みたいな、遊び心としてのバイクじゃなく、良質な移動手段として第一に考えてしまうのが不思議でならない。同じATスクーターのアドレス110やK-XCTでは感じなかったんだけどな・・何が違うんだろう。

アレ?でもその土俵に唯一入れるって、実はスゴいんじゃねぇこのバイク?

よく考えてみると車よりコストが安いし、運転ラクだし、疲れないし、細い道でもガンガン突っ込める、それでいて荷物も積みやすい・・スゴいな。スゴいわPCX。 

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PCX。それは、やせ我慢も無茶も挑発も感じさせない、オレの中ではかなり新しい切り口のバイクだった。そんな優しさのような物に触れたからこそ「もうコレでいいんじゃないかな?」って思えたのかもしれない。

もし、優しいバイクは何かと問われたら、「強いて言うならコレですかね」と言いながらPCXを指差すと思う。

スクーターの運転が比較的簡単なのは知ってるけど、まさかこんな歩幅でアプローチを仕掛けてくるとは思わなかった・・バイクって実際乗ってみないと分かんないことだらけだな。まあそれが醍醐味でもあるんだけど。

おしまい。

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この日の帰り際、グロムのリアタイヤが無残にもパンクした。もう、ヤんなっちゃうなオイ。