R25と6年

ここまで年を重ねるとね、これでいいっていうか、これがいいって思っちゃうのよね。とてもじゃないけど他に乗り換える気なんか全く起きない…

2,3年前は大型に興味があったけど、実際乗っちまえば36馬力も200馬力も大してやる事変わんねーし、優れたデザインも走れば見えねーし、素材がアルミだマグネシウムだも新東名120km/h出し続けて壊れなければ何でも良くね?ってなってからスゲーどうでもよくなった。

裏返して150ccも考えたけど、125ccのグロムを所有してるから軽量級は別にいいやと。

そもそも壊れてないっていうのが大きい。維持出来て動くバイクを手放す、または買い換える理由を逆に知りたいね。

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まあそんなエラソーなこと言えるのも、R25が良いバイクだからなんですけどね。

コントロールしやすいバイクなの、ひとことで言うと。

非常に感覚的な話になるけど、エンジンの味付けがバッサリ分かれてて、レッドゾーンから上半分の反応がスポーツカーのようにアグレッシブで、下半分の立ち上がりが緩やかでリラックス出来る世界って感じ。

ギア比も両方の良さを引き出すように、6速中の1,2,3は右手のレスポンスに過敏で各々の力感が近く、4,5は中庸、6はガクッと回転数が下がり巡航に向いている。使いどころの幅が広く分かりやすい。

下段のギアの高回転で最高7,80km/hまで加速、中段のギアでパワーバンドを切らさずに追い越しの余力を持たせて、上段のギアで見果てぬ高速道路を落ち着いて走る。

逆にハーフスロットルでバスバス変速してトップギア60km/hでも全くギクシャクしない。

このようにR25のパワートレインは「いらない」や「足りない」を感じさせない。理解すればする程どのシーンでも活躍出来て、どれもが頼もしい。適材適所が絶妙に敷き詰められてる、コレってスゴいことですよ。

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それとさ、このバイクってれっきとした機械なんだけど、スゴく人間っぽいというか…感情の激しさや穏やかさの2極がしっかり演出してあって、そこに行き着くまでのグラデーションであったりスイッチがある感じも人間に似通ってるんだよね。

接するにもどこか馴染みのあるコミュニケーションに近いから「コントロールしやすい」って感想が出るのかもしれない。

それにただ速いとか、どこも穏やかなバイクだったらライダー側が型に合わせに行かなければいけないけど、R25はどっちにでも振れるから「今そういうのじゃないんだよな」が生まれづらい。ライダーの精神衛生に優しいってのは隠れた美点だ。

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車体のバランスも良く乗りやすい。タイヤも無闇に太くなく、ハンドルとシートのポジションも力感を持たせないからナチュラルな操作で荷重と応答とグリップが繋がってくれるし、ロングスクリーン付けるだけで高速道路走行中の安定感がバツグンになる前後脚の素性の良さ。

それでいて250cc特有の取り回しの軽快感が付いてくる。36℃の炎天下で走ってもエンジンは熱くないし、フェアリングが大きめだから冬もまあまあ寒くない。バイクにしては天候に対してコンスタントなパフォーマンスが出せるのもR25の注目ポイントだ。

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それと、あと1つ。ちゃんと速い。

バイク全体で36馬力はそうでもない印象だけど、実際に公道で遅さを感じた事が無い。

スペック的な話になると先代の86と高速合流の加速スピードは同じくらいらしい。ノーマルとはいえ排気量2000ccのクルマとイコールって。そりゃ速いわ。

だもんでシグナルダッシュでテキトーに加速してもクルマに越されることもほとんど無い。あるとすればガラの悪い高級車乗りくらいだ。

250cc、比較的廉価であることなどで感覚が麻痺してるかもしれないけど、そこら走ってる軽量級スポーツカー並に速いということを忘れてはいけない。

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ということで、速くてコントロールしやすく乗りやすい。そんな印象が変わらず手放さず6年。その間にはもちろん葛藤もあった。特にバイクを取り巻く環境には。

止まらぬ刺激の追求だったり、自己演出の1つだったり、誰かとのポジション取りだったり…バイクには色んなことが課されているけど、素直なR25に乗ってるうちに「本当にバイクでしたかったことって何だろう?」って考えるようになった。

いくら速くたって制限速度があるし、カッコいいバイクを持っててもオレ自身が自動的にカッコよくなるワケではない。マスツーで大型バイクに前には距離を大きく開けられ後ろからせっつかれても、オレが思う安全なスピードで走るしかない。

乗れば乗るほど界隈の色々な固定概念が削ぎ落とされていって、「ハイスペックだと威張りが効く」「他人と被らないのが良い」「複数人走行におけるスピードの多数決」「行った場所や走行距離は多いほど良い」などの意識からもうすぐ抜け出せそうだ。こう書くとオレが見たバイク界はずいぶん窮屈だ。

安全に、無理や我慢せず好きなだけ、闇雲に振り回されず見せびらかさず走ればそれでいい。いや、それがいい。これが6年間の答え。概念と真剣に向き合わずイヤなら枠からイチ抜け楽しむ。

もしも浮世離れと指差されても構わない、だって俺にはバイクと公道があるから。週1,2くらいならハミ出したっていいじゃない。