数年振りに

2個上にぃ

コーサクくんって仲良くしてる人が居るんすけどぉ

その人ガッチガチのブルーカラーなんすよぉ

普通コーサクって言ったらサラリーマンになりそうじゃないっすか、島的な感じで

年上なんすけどマジ名前負けしてるっつーか、ヤバいっすよね?

 

…久し振りに出会ったと思ったら、そんな話を放り込む奔放っぷり。数年前と何も変わってない。

彼は高校時代に仲が良かった1つ後輩のギャル男。最初の出会いはたしか7月、期末試験明けの放課後。同じ教室で彼が第二種電気工事士の実技練習、オレが第一種電気工事士の筆記の勉強をしている時だった。

みんなには思い出して欲しいが、夏のテストが終わった後は基本的に午前中しか授業が無い。

何も課せられない上に、学校に居るのが短い。そしてすぐそこに待ち受けているのは夏休み。遊びに部活にバイトにと各々が思い切り羽根伸ばして青春を謳歌出来る無敵の時間たち。

そんな最中、グレーのビニールちぎって銅線剥き出しにして数時間グルグルズボズボ繋ぎ合わせるのは色々苦しかったんだろう。彼は思わず

「あーマジでやってらんねぇ、センパイ去年もこんなことしてたんすか?仏っすか?」

と急にこちらを振り向き話しかけてきた。

「オレは目的があるからやってるようなもんで、お前はそういうの無いの?」

と返したら

「まぁ、とりあえず持っときゃ食いっぱぐれが無いっつーかそんな感じっすね」

と答えた。意外と真面目な動機だったので今でもよく覚えている。そのあと自分で何とか持ち直して渋々課題に取り組んでたのも何故か覚えている。

 

それから同じ空間で話す間柄ということもあってか、オレが実技のコツを教えたり彼が2人分の飲み物を買ってきてくれたりと段々距離が縮まっていった。

お互いの試験が終わってからも関係は続き、校舎ですれ違えば話をしてたし、球技大会のソフトボールではワザとデッドボールをぶつけ合ったあと揃って先生に怒られたりと、間柄はとても良好だったがオレの卒業を境にめっきり会うことは無くなった。

 

そして現在、歯ブラシを買いに行ったドラッグストアの駐車場でまさか彼と出会うとは。

典型的なギャル男容姿が数年で七三分けのインテリ風になってるとは思うまい。最初は誰だか分からなかったけど、話し方と内容が当時のままだったからすぐ思い出した。

そのあとも「コロナ滅したら良い和菓子屋さん知ってるんでぇ、一緒に行っちゃいません?」と営業マンらしからぬギリギリな日本語で誘ってきたり

「バイク乗ってんすか?まさかオフロードじゃないッすよね、センパイすげぇオフロード顔だから(笑)」と意味不明な決めつけと煽りを繰り出したり、あの頃と全く変わらない面白さだった。

話もそこそこにお互い別れ、こういう偶然も中々良いものだなと思いながら後ろを振り返ると、そこにはタイヤがハの字になった青いスポーツカーに乗り込んでいく彼の姿が。

爆音を鳴らし、ハイスピードで海沿いへ消えていくテールランプを見やった後「クルマはオレが出してやるか…」と強く思った梅雨前の夕方だった。