道具に彩りは必要?

オレは色合いとかにコダワリの無い性格だ。数色も一気に身に纏った色キチじゃなければ別に何でもいいだろう、その程度の認識だ。

だからクルマの色は洗車が面倒くさいので汚れにくいものを、ヘルメットの色はそのとき在庫のある中で選ぶ。

「別に色で速くなるワケじゃねえしな」と友人に話すと「夢がねえなぁ」と呆れられる。

 そんなオレが最近、10年前くらいのMOTOGPのドキュメント映画である、FASTESTを見た。

内容としては面白かった。「ライダーってこういうこと考えてるんだー」「当たり前だけどロッシ居るよなぁ」って。

その中でも印象的だったのが、ペイントの話。

オレはてっきりスポンサーの意向でバイクと全身のカラーが決まっていると思ってたけど、ヘルメットはそうではないらしい。

1度映画を止めて、スタート前に集合しているライダーを検索してみた。確かに頭の色合いが全員バラバラ。三者三様だ。

再生をタップし直し、ヘルメットデザイナーが話す。

「色は人のメンタルをいかようにも動かすことが出来るスイッチなんだ。」

「これは遥か昔の狩猟民族時代からそうで、彼らは狩りの時に顔へペイントを施した。そうすることによって戦いへの切り替えをしてたのさ」的なことを言っていた。

実際に「このデザインのヘルメットを着けると落ち着く」と話したライダーも居るし、頻繁にデザインを変えて己を戒めたり、時には奮い立たせるライダーも居た。

映画を見終わり、自分のヘルメットを取り出し眺める。どこから見ても1面艶消しの真っ黒。「色、変えようかな」と思ったけど、止めた。

振り返れば、バイクに乗ってから奇跡的にずっとマットブラックを選んでいたからだ。

f:id:primarycell:20210326100554j:plain

あの時に楽しくツーリング出来たのも、あの時の事故が最悪の結末じゃなかったのも、きっとこの色だったからなのかもしれない。そう思うと市販の、何の変哲もない黒が見間違えるように誇らしく見えてきた。

グランプリライダーがオリジナルの極彩色を塗るなか、オレはずっと黒を塗っていこうと思う。今までのように安全に、これからを楽しく過ごせるように。

次も、その次も同じ色を選ぼう。外側は地味で独自性が無くても、積み上げてきたものが内側のスイッチを力強く押してくれてるから。持つべきものは信じる心だ。