ハンターカブが家に来た

購入したワケではない。何か家に置いてあって、乗って良いだけだ。

詳しい話は省くが、とある人がハンターカブを買うだけ買って、「キサマ、乗れぃ!」というノリの白羽の矢が俺にブッ刺さり、手元に置いてある。…自分で書いててもこの話の意味が分からない。

ちなみにそのとある人はカブの為だけに新しく免許を取りに行くほどの行動力があるのに、乗らない。これも分からない。

とまあ分からないことを考えても仕方無いので、乗ることにした。

 まあその、すっげえ中途半端。ロータリー変速って。

ギア感や操作感ならMTだし、ラクしたいならCVTだし、輝くとしたら「重積載で上り坂をラクに登りたい」ときくらいだ。

正直メリットがどうとかは無いですよ。カブ主という言葉があるくらい愛されてるけど、機構自体はホントに中途半端。人によってはガッカリするかもしれない。オレもそうだったし。

でもさ、それこそが面白いんだよね。今までの定規をブン投げられて、独特の操作を求められて、でも何かMTっぽくてCVTっぽい。ちょっと強くてニューゲームな乗り味がまあ楽しい。

知ってる道も、カブならまるで新しい道になる。それって結構な刺激だ。

特に良いのが、シフトワークがMTとほぼ真逆というのが良い。基本MTはペダルを上に上げたらシフトアップだが、カブは下に踏み込んだらアップする。

MTに乗り慣れれば慣れるほど違和感となり、それを言い聞かせ、たまに間違え、自分なりの工夫する。

その行程こそがオレが一番感じるカブの良さだ。跨がればいつもどこかに新鮮味があって、少しだけ身体や頭を使うような走りも退屈しない。

でもこれは根幹にMTがあるからであって、カブがファーストバイクならこうはならない。おそらく便利で経済的な乗り物、という所に届いて終わりだろう。

カブの面白さはMTを乗ることでより深みが増す。カブしか乗ってない人は是非左手にクラッチのあるバイクに乗って貰いたい。もしどっちも乗ってる人が居たらかなりの幸せ者だ。

…ここまで話しておいてハンターカブの話をしていないことに気づいた…見てる人も薄々は気づいてるだろうね。

まあ車体が良い仕事してるよ。前後が足長だから左右の舵感がおおらかで、Uターンしやすく積載にも負けてない。

ハンドル位置も高いから腕がリラックスしやすくフルロックもラクラク

それでいてタイヤは細いから実際はクイックに曲がる。手足はヨタッとした感触だが、車体はズバッと向きが変わる噛み合わせの悪さも新鮮さを感じる。

勝手に走っておいて、オーナーでもないのにアレだが、決してライダーと直接神経が繋がってるようなハイレスポンスでハイブローなバイクではない。隙間だらけの、云うなれば間抜けだ。

しかし、だからこそ乗り手で大きく変わる。ただの緩慢か、ゆったりとした鷹揚か。見た目だけが先ん出るファッションバイクか、ヘビーデューティーな滋味溢れるバイクか。楽しく乗るのか、仕方無く乗るのか。

他のバイクより造形が良く構造が曖昧だから、ライフスタイルの膨らみが大きく捉えきれない。十人十色を受け止める広さがある。つまり、どの年代でもどの性別でもしっくりくるバイクに感じた。

他のカブを乗ったことが無いから何とも言えないが、ハンターカブに関して言うなら「現状中途半端、万能の原石」と形容できるだろう。

ぶっちゃけ適当に乗ってもそれなりにどうにかなるが、経験や勘を積み上げれば下道で一番心強いバイクに化けると思う。

この未完成さは個人的にとてもワクワクする。グロムが直せなくなったらハンターカブという選択は大いにアリだ。

…何か間違って譲ってくれないかな、オーナーさん。

おわり。