エブリイの3速

先日、知り合いの変態がセカンドカーにエブリイを購入した。イヤ、正確には親戚から破格の安さで譲ってもらったらしい。

オレのとは年式は違えど2WDの5MTターボ、軽量最速モデルだ。となれば花が咲くのが「エブリイの3速」だ。 

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…おそらくエブリイ、ひいては軽貨物ターボ車に乗ってる人なら分かってくれるとは思うが、あのタイプの本気は3速からだ。

1,2速は準備体操に過ぎない。交通の流れに置いていかれないように甲高くフケ上がるエキゾーストノート、そして叩きつけられる2,30km/h。

「あぁ、やっぱり遅い。所詮は箱だ。」と呆れながらやや事務的に中央前へシフトレバーを漕いだ瞬間、一切のフン詰まりが解け、刹那に過ぎ去る景色と共に2つの針がどこまでも伸びていく。

…最高だ。どアタマから最適格な俊敏では無い、まるでターゲットを狙う最中のような余白や過程やらを感じさせる動物的なフィーリング。

1速で獲物を探してひと歩き、2速で全身を屈め筋肉を縮める、そして3速からは…言わずとも分かるだろう、楽しい世界だ。

何とも思わせないところからあの加速。速いクルマが速く走るんじゃなくて、遅いと思わせたクルマが速かった。このカタルシスたるや他では味わえない。

マニュアルトランスミッションは単なるトップスピードへの選択や気持ち良い音を自由に奏でるゲームじゃない。それぞれのギアに込められた物語を噛み締め、息吹を感じ取り、2度同じ物は紡がれない自分だけのオムニバスを繋ぎ合わせる。それに気付かされた。何とも素晴らしい乗り物じゃないか、エブリイは。

 

…とかナントカ30分も言ってのたまう変態がいましてね。ボイスメモってこういう時に使うんだってのが良く分かりました。書き起こすとスゴいですね、変態って。

でもそんな彼にも同意することもあって、マジで3速は万能でありキモだ。高速合流の加速、市街地走行、上り坂とお世話になることが多い。

変態はだいぶ誇張していたが、確かにエブリイは楽しいよりも楽しむクルマなのかもしれない。

 

高いスペックや身体に優しく馴染んでいくフィーリングに囲まれてヨダレ垂らすクルマじゃなくて、ガサツな荒波の中を奥歯噛み締めどうやってサバイブしていくか。

まあペットで言えば前者が犬で後者が猫みたいな感じ。良さは違えどどちらも良いことには変わりない。愛そうぜ、両方とも。

 

変態はそんな理解出来そうで理解し難い言葉を残し、仕事へ向かった。おそらくお気に入りのロードスターじゃなくエブリイで。

半年前「軽バン?貧乏人の乗り物だろ?」と豪語した彼をここまでのめり込ませたエブリイ、そして3速。

もし少しでも気になったら乗ってみたほうがいい、ハマれば変態まっしぐら、ハマらなければ常人おめでとう。というか多分このブログ見ているってこと事態少し変態寄りな感じするし、ヒマつぶしがてらみんな1回乗ってみれば良いんじゃないですかね。何となくだけど。